THE 父
先日朝のニュースを見ていたら「父の日に、お父さんがもらって嬉しい物ランキング」たるものを発表していた。その1位が「心のこもった言葉、お手紙」的なもので、ええ、ほんまに?全国のお父さん、本当に本当??と、画面を凝視してしまった。
もちろん、そういった贈り物が嬉しいお父さんがたくさんいるのは事実だろう。しかしなかにはお気に入りのメーカーのビール箱買いとか、子どものころ夢中になっていた漫画全巻とか、レアプラモデルとか、そういうものを喜ぶお父さんもいると思う。つまり、お父さんの数だけお父さんが喜ぶプレゼントがあるよね。
恐らくだけど、うちの亡き父も”心のこもった~”より、そういうモノの方が喜んだのではないかと踏んでいる。(もちろんお手紙でも喜んだだろうけど、なにぶん照れ屋で不器用なおっさんだ。娘の気持ちを逆なでするつまらん冗談でも吐いて喧嘩になっただろう)そこで、いま父が生きていたら父の日に何をあげたかなぁ、なんて考えてみた。
(ちなみに、最近うちの父に似ているなぁ~と思ったキャラクター、モンスターハンターライズの「ゴコク」というおじさん。体型も顔つきも似ている)
しかしながら、父が亡くなりもう9年もの月日が経とうとしている。これまで父の日に何を送って来たのか、正直ほとんど覚えていない。ただ、父は送ったものはどんなものでも素直に愛用する人だった。
昔、あまりお金がなかったけれど、父の誕生日にマフラーを送ったことがある。イトーヨーカドーとか、東急とかに入っている、紳士服売り場で買ったリーズナブルな価格のマフラーだったと思う。けれど、父は通勤時に必ずそのマフラーを着用し、長いこと大事に使ってくれていた。(彼が亡くなった後、せっかくなのでそれは遺品としてわたしが持って帰った)
加えて父は贅沢をしない人であり、一つのものを長く使う人だった。そういう父の性格を考えると、ワンランク上の着心地のいい洋服などいいかもしれないし、お昼寝が大好きだったので、気持ちよく眠れる枕や布団なんかも候補に上がる。
また父は生前、家のこぢんまりとした敷地内で野菜を育てていた。わたしは、初心者でも簡単に育てられるというバジルでさえ枯らせてしまう人間なのだが、父はナスやらピーマンやらシシトウやらを立派に育て、大量に収穫していた。(それを実家に帰ってきたわたしに大量に持たせた)だから、野菜や植物を育てられるような栽培キット一式を送るというのも、かなりアリだ。
とはいえ、今はコロナ時代。もし父が生きていたら、父と母、猫の慎ましやかな暮らしが繰り広げられていただろう。その中で、母は父に何か趣味を持つように勧めるはずだ。となると、父が家庭菜園のレベルアップを図ることはわりと目に見えている。そのため、もしかしたら栽培キット云々はあまり適切な贈り物ではないかもしれない。
父は本の虫なので、本を贈ることももちろんアリだ。何をあげても大体楽しく読んでくれるので、過去にはアーノルド・ローベルの本やドラえもんの漫画などを勝手にプレゼントした。ただ、好きな本はきっと自分で買いに行くはず。だから、電子書籍リーダーを送ったら、喜んで使いこなしていたかもしれない。
電子書籍リーダーで思いついたけれど、もしかしたらNintendo Switchなんかもアリかも。「世界のアソビ大全51」という、オセロなどの定番ゲームからニッチな外国ゲームまで入っているソフトがあるのだけど、父なら絶対に楽しめたんじゃないかな。
父が生きていた頃、もちろんスマートフォンもパソコンも普及していたけれど、彼はガラケー愛用者だった。もし生きていたらスマホやタブレットの使い方も教えているだろうし、Switchでスムーズに遊べた可能性もある。
あとは、お酒を送るのも一つだ。父は家でまったくお酒を飲まなかったけれど、大変お酒好きだった。仲間と飲むのが大好きで、新宿ゴールデン街にはよくお世話になっていたとのこと。晩年、一度だけこのゴールデン街の飲み屋に連れて行ってもらったことがあるのだけど、あのときの父の嬉しそうな、得意そうな顔は今でも覚えている。ほかに、年末年始などの特別な時期に少しだけ父と飲んだことがあるけれど、結局彼と一緒にお酒を飲んだ経験は本当に片手で数えられるくらいなのだ。今ではわたしも少しはお酒を知っているわけだから、美味しいお酒を送るっていうのもいいかも。珍味みたいなおつまみも添えて。
植物にも、生き物にも面倒見がいい父。メダカを育てさせたら、めちゃくちゃハマるかもしれない。そして繁殖を成功させ、ものすごい勢いで数が増えていったのではないだろうか。慣れてきたら、ほかの水生物の飼育にも手を広げたりして。子どもの頃、誕生日に亀を買ってもらったことがあるのだけど、大きくなるにつれてその亀の面倒は父が見るようになり(ごめんなさい)、最終的に立派な亀の住処を作ってあげていた。亀も幸せだっただろう。
こうやって考えてみると、実は父に送りたいものってたくさんあった。そして結局のところ、父は何をもらってもそれなりに楽しんでくれるはずだ。
今彼が生きていたら75歳。今年の11月で76歳を迎えることになる。だいぶおっさんだ。この時代、あの大きな腹で健康に生きていられただろうか…。ちょっとばかし早くこの世界の扉を閉めてしまった父だが、そんな彼にたくさん土産話を持って行けるよう、今日も明日もそこそこ元気に生きていきたい。いい、父の日を。
【サブスク開始のお知らせ】+少しつぶやき
5月からはじまった新しい生活に慣れるのに精一杯で、何かをじっくり考えたり、新しい何かに出会ったりすることが少ない。ただ、何となく「社会」の一員として求められているべきことと、いつも逆方向に舵を切りそうになってしまう、ということには気づきはじめた。(そう、たとえばリモート会議に参加していると、余計なことを言ってしまいそうになるとか…)正直、いつものこと、と言えばいつものことなのだけど。
あとは、相変わらず”文章”にまつわる仕事をしているのだけど、その”文章”へのこだわりの有無や、考え方が人それぞれすぎて、もう卒倒しそうになっている。その辺の話はまた別の機会に書けるといいかもしれない。
そんな風で、新しいことがないと言いつつも、一つだけ新鮮なトピックがある。
先月末、5/28にベース弾き語り音源のサブスクを突然開始したのだ。本日はその告知になります。
▼人生初のベース弾き語り音源を配信開始!
ApplemusicやSpotifyなどはもちろん、幅広い配信サービスで配信していますので、ご利用中のサービスなどがありましたら聴いてみてください。
収録曲は下記のとおりです。
【ヒガシノメーコの考え(方) 】
1. ジジィ
2. オバちゃん
3. 皮膚と心
4. 吉田さんの歌
5. カジュアルカースト
(※カタカナ楽曲)
6. ねむる
<ポイント>
◎楽曲にはアコベを使用
◎お気に入りの曲は「ねむる」
◎鍵盤のアレンジがどれも素敵…!
…ちなみに、
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、わたしの入力ミスによりアルバムタイトルが、
「ヒガシノメーコの考え” 方 ”」
になってしまいました。
一年間はこのタイトルで配信し続けるため、どうか” 方 ”の存在はスルーしていただけると助かります。
そしてサブスク開始時、自分の弾き語りジャンルが分からず、フォークやオルタナティブで登録したんですが…なぜか4~5日ほど、Apple Musicのランキングに入れました。ありがとうございます!
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最後に。今回配信を開始したのは、わたしが感じた日々のアレコレを詰め合わせた楽曲になります。
鬱屈としてしまうようなニュースが多く、なかなか前向きになれないこともあると思いますが、個人的にそれを無理にポジティブ志向になる必要はないと思っています。今回の楽曲を通して、そんな”無理しない”が皆様に伝われば嬉しいな。
ぜひお楽しみください!