ヒガシノメーコ記

ヒガシノメーコのエッセイや漫画。【毎週 月曜日(イラスト・漫画)】と【隔週 土曜日(エッセイ)】を更新。

地域猫との切ないはなし

最近、夕食時にYouTubeで「猫ヘルパー-猫のしつけ教えます-」という番組を見ている。これは動物専門チャンネルアニマルプラネット”の番組で、アメリカのリアリティ番組として2011年5月にスタート。シーズン9まで続く大人気番組となったそうだ。(2019年にシーズン9が終了した)

 

原題は「My Cat from Hell」――その名の通り、番組に出てくるのは地獄から来たようなクレイジーな猫たちばかり。そんな猫と、猫に手を焼く家族との問題を、猫の行動学者”ジャクソン・ギャラクシー”が解決するのである。

このジャクソンはゴリゴリに刺青の入ったスキンヘッドの大柄な男性で、夜はミュージシャンという意外な一面も持っている。しかし、そんな見た目から想像できないほど猫や人間に真摯で、優しい人柄だ。そんなジャクソンの姿や、彼によって変わっていく猫・家族の様子に、図らずも涙してしまう場面もある。ためになることも多い本当に面白い番組で、初めてこの番組を見つけたときは1シーズンまるまるぶっ通しで観てしまったほどだった。

 

…というわけで現在全話ではないものの、同番組のエピソードが多数公開されているため、わたしはほぼ毎晩この番組を見ながら夕食を取っているのである。

 

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同番組の中でジャクソンは、猫のストレスを発散させたり、猫と飼い主の信頼関係を築いたりするために、よく「羽根つきオモチャ」を使って猫を遊ばせていた。もちろん猫によってオモチャの好みは異なるのだが、この羽根つきオモチャだけは番組に登場するほとんどの猫が夢中になっていた。

 

「なるほど…」と猫に対する新たな知見を得たわたしは後日、100円ショップへ。1個500円の羽根つきオモチャを嬉々として購入した。理由はひとつ――これで近所に住まう地域猫の心をがっちり掴むためである。

 

その数日後、不定期に現れる地域猫たちがわたしの家の近くにやって来た。いつもなら餌をあげるだけで終わるのだが、その日は彼らが食事をしている間にわたしはいったん自宅へ戻る。そして例のオモチャを携えてもう一度彼らの前に現れた。そして猫たちが食事を終えたのを見計らって、このオモチャを見せてやった。

 

目を丸くする猫たち。オモチャをゆらゆらと揺らすと、顔をひきつらせた猫たち3匹のうち1匹、また1匹と離れていった。思ってた反応と違うな…と首を捻りながらも、ジャクソンがやっていたように、オモチャを地面に接地させてから素早く左右に動かしてみる。残った1匹の猫は少しだけ興味を持ち、飛びつこうとする素振りを見せた。しかし最終的にオモチャに飛びつくどころか、突然何かに気づいてしまったかのように目を剥くと猛ダッシュで逃げていった。恐怖心が爆発してしまったかのような反応だ。そうして、猫を喜ばせようとして大失敗したわたし一人だけがその場に取り残されたのである。

 

以来、わたしは地域猫たちにちょっとしたトラウマを植えつけてしまったようで、気軽に彼らが寄りつかなくなってしまった。あの猛ダッシュして逃げた猫なんかは、いつものように近所まで来ても、わたしの姿を見つけると「あなた、あの変なモノ持ってますよね?」と訝しげな目でわたしを見つめ「ナァアア……」と悲し気に鳴くのである。餌は欲しいけど、あのオモチャが怖すぎて無理…という感じで。

 

「猫ヘルパー-猫のしつけ教えます-」によって猫のことを理解したつもりが、逆に彼らに恐れられるようなことをしてしまった。地域猫の反応が悪かったら実家の猫にオモチャを譲ればいいやと思っていたけれど、これ以上猫に嫌われたくないので、このオモチャは破棄しようと思う。そんな最近起こった少し切ない失敗の話でした。

 

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