みんなたのむ一緒に気をつけよう
もとより自宅で仕事をしている人間だけど、コロナの影響でより自宅に籠りがちな生活となり、気づけばあっという間に桜が咲き散ってしまった。カメラを持って慌てて外に出て、青い葉が混じる葉桜や、足元に散った桜の花びらを撮影した。もちろん友人と”お花見をしよう”なんて話になったりはしない。寂しいといえば寂しいかもしれないが、今はそれが最善の行動である。
とはいえ、日々の生活に必要なものを調達するため街へ出ることもある。昼頃に外に出ると、真新しい作業着やスーツを身につけた人々がまとまって信号待ちをしていた。先輩たちに連れられて昼食に赴く新社会人たちなのかもしれない。春といえばそういう季節、新しいことがはじまる季節だなぁと実感する。
わたしのこの春は例年と同じように思えるけれど、友人と食事をしたり、バンドメンバーと練習やライブをしたり…と言う当たり前のことが生活から取り除かれているのだから、”今までと同じ春”ではないのだろう。それでも1年も経ってしまうと、今の生活が当たり前と思えてしまうのだから不思議だ。
しかし、当たり前と思ってはいけない面もある。
つい最近、GoogleのAI(人工知能活用)によるCOVID-19感染予測サービスの存在を知った。このAIが叩き出す予測数字は恐ろしいものだった。今月末には確実に感染者数も死亡者数も跳ね上がると予測しているのだ。
▼参考
(↓これが実際のAIです)
現在のわたしたちはこの状況から1年を迎え、確実に「慣れ」はじめている。もちろん、わたしにもそういう部分がある。しかし、気をつけることが「習慣」になることと、この状況に「慣れてしまう」ことはまったく違う。今この緩んだ紐を締め直さなければ、この最悪な状況が続くどころか、ますます悪化してしまうのは明らかだということだ。(…と、わたしはこのAIの予測数字を見て感じた)
テレビや配信などでも、しっかりとパーテーション・マスクを着用する番組と、それらのグッズを使用せず普通の距離でやり取りを行なう番組とで分かれている。いつからそうなったのだろう。でも後者のような状況を放送することは、わたしたちの感染予防意識を下げている気がしてならない。
あまりうるさく言いたくはないが、SNSを見ていてもそう思う。室内・室外で仲間たちと酒を飲み、盛り上がり、仲良く顔を寄せているような写真の投稿も明らかに増えた。何を見せられているんだという気になる。
たしかに人間は無限に我慢ができるわけではないと思う。適度に溜め込んだストレスを発散しないと危険であることも分かっている。経済活動のために物を買ったり、食べたりする必要があることも、もちろんだ。それでも、上記のようなものが目にしてしまうと、頑張っている人たちになんて失礼なんだと怒りを通り越して呆れてしまう。
どうかわたしの大事な人たちが辛い目に遭わないよう、これからも自分の行動に責任を持ち生活していこうと改めて思った。
今回は前向きな記事ではないけれど、新しい生活がはじまる今だからこそ気を引き締めていこう、という意識をみなさんと共有できればと思います。
ローベルとカール、えほんのせかい
絵本「がまくんとかえるくん」でお馴染みのアーノルドローベル。そんなローベルの企画展示が今年1月より立川PLAY!MUSEUMで行なわれていた。
コロナの影響もあり、ギリギリまでこの展示に行くことを迷っていたのだけど、いよいよ明日が展示最終日…というギリギリの本日、やはりどうしてもこの展示に行きたくて足を運んだのである。
▼企画展示 「がまくんとかえるくん」誕生50周年記念
アーノルド・ローベル展@立川PLAY!MUSEUM
昔、実家には廊下の床が軋んでしまうくら膨大な絵本・児童書が詰め込まれた本棚があった。その本棚にはもちろんローベルの作品があり、(わたしは3人姉妹なのだけど)わたしもお姉ちゃんも幼少期に彼の作品に触れてきたはずだ。さらに小学校時代は図書館にある彼の作品を片っ端から読んだように思う。温かみと生命を感じさせるイラストと、優しく語りかけてくれるような文章に、誰もがファンになっただろう。
ローベルはハートフルな作品を描くけれど、だからといって彼自身が非常に豊かな人生を歩んでいたわけではないらしい。
病気がちだったことや、両親と離れて暮らしていたことなど、小さな頃からいろいろな悲しみや辛さを抱えて生きていた。そんな彼の心の拠り所となったのが本であったし、また「家族」や「友人」の大切さを人一倍感じていたため、彼が味わっていたような寂しさのない愛情や友情に溢れた世界をつくりだすようになったのだとか。
ちなみにこれは、ローベルが学生時代につくった試作絵本。すでに素晴らしい出来栄え。本当に昔から絵本を愛していたんだなあ。
「いえのなかを外へつれだしたおじいさん」「ふくろうくん」「とうさんおはなしして」「おはなしばんざい」など、お馴染みの作品が満載。
使用できる色に制限あることを逆手にとり、色の変化を楽しめる作風にした「いろいろへんないろのはじまり」、自分を育ててくれた祖父を想ってつくった「ぼくのおじさん」など、ストーリーの背景も知れて面白い。
読んだことのない作品もたくさんあった。亡き愛猫オーソンに捧げるべく制作した「ローベルおじさんのねこのマザーグース」は愛情たっぷりのイラストがたまらない。
会場では販売していなかったけれど、この絵本はぜひとも手に入れたいと思う。
さらに、詩人との親交もあったローベル。ちょっとブラックだったり、シュールだったり…な世界観のイラストも描いてしまう。(ブラック風のはエドワード・ゴーリーやオディロン・ルドンのような雰囲気を感じました)
(とってもかわいい!素敵です)
そして最後は「がまくんとかえるくん」の展示。やはり一番力の入っているエリアで、がまくんとかえるくんシリーズにまつわるエピソードが印象的だった。
(「ふたりは ともだち」「ふたりは いっしょ」「ふたりは いつも」「ふたりは きょうも」の順番で発表されたんですね)
中でも驚いたのが、ローベルが同作品を手がけている際、次第に”「かえるくんが支配し、がまくんが支配されるという悲惨な関係」を感じるようになった”…というところ。我々はきっと、ちょっとドジな友達をしっかりものの親友が助ける、という2人の構図を純粋に楽しんでいたと思う。だからわたしは正直、そんな発想(ものの見方)をしたことがなかった。
だけど、この2人を一番近くで見ていたローベル、ある意味2人の親であり友人であるローベルだからこそ、そういった危機感を感じずにいられなかったんだろうな。非常に驚き、感心した。
その結果「ふたりは きょうも」が生まれ、互いが等しい関係であること、それを認め合い、必要とし合っていることを描いた”ひとりきり”で同シリーズのストーリーの幕が下りたのだとか。
たたき台から最終調整にいたるまでの、編集者とのやり取りが展示されている場所もありました。とても丁寧なやりとりで、中には写真左上にあるように「これ好き!(I love this!)」とキュートな感想が書かれていることも。
「ふたりは きょうも/ひとりきり」の終盤の場面。周りに人がいなければ泣いていたと思う…。感動的なシーンです。
こちらがローベル本人。奥さんが撮影している写真が多く、どれも素敵だった。またサラッと触れられていたけれど、のちに同性愛者であることをカミングアウトしたそう。しかし、その後も10年ほど奥さんと暮らされたとのこと。現在よりも、もっと難しい時代だったと思うので、本当に多くの苦労や困難があったと思うけれど、撮影されたプライベート写真はどれも生き生きとしていたなぁ。
ちなみに奥さんも絵本作家で、共作された絵本(「わたしの庭のバラの花」など)もかなり素敵!
ちなみにわたしは、ローベルの絵本を父にプレゼンツとしたことがある。父の日だったか、誕生日だったか…忘れてしまったけれど、プレゼントした翌年に父が亡くなってしまったので印象深い。結局その絵本は自分で引き取ったのだ。当時、お父さんはこの絵本をどんな気持ちで読んでいたのかな。
本当に素晴らしい展示でした!大満足です。
▼年間展示「エリック・カール 遊ぶための本」
ちなみに同時開催としてエリック・カールの展示もあったので、嬉々として拝見。ナチスに制圧される時代などを生きつつ、色とつくることが好きな自分の気持ちに素直に従い、絵本作家となったようです。
エリック・カールといえば「はらぺこあおむし」が代表作。そんな彼の作品がどんな風に制作されているかを知って驚愕…。
彼の作品はいわゆる「コラージュ」と呼ばれる作風のものが中心。さまざまな素材のものを組み合わせる、というものだ。そしてカールは、そのコラージュの「素材(紙)」まで自分で作っている。つまりカールの制作はまず、この赤や青、黄色、橙と色とりどりの素材づくりからはじまる。そしてその素材をたくさんストックしているのだ。
まとめると、カールのイラストの成り立ちは「イラストの線画を描く→その線に合わせて素材の紙をカットしていく(素材は手づくり)→紙の裏に糊を塗り、ピンセットで貼り合わせていく」…という具合だ。制作風景は凄まじい集中力、それでいて楽し気。ローベルとはまた別の、生命力にあふれた力強い魅力がある。
これが実際にカールがつくっている素材だ。透過できるということから、この薄い紙を使っているらしい。とにかくこの素材がどれも魅力的。カール自身「自分は色が大好きだ」と言っていた。
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最近気持ちがくさくさしており、いろんなことが億劫になったり、憂鬱になったりしていたけれど、素晴らしい作品や人生に触れることができて、自分も生命力を取り戻したかのような気持ちになった。
素敵な作品を素敵と思ったり、好きという気持ちを、今後も忘れないようにしていきたい。